ミユビゲラの分布は北方樹林、タイガと呼ばれる森林地帯の分布とほぼ重なっています。 いわばミユビゲラはタイガのキツツキです。

 日本での生息地は? 大雪山国立公園内でのみ繁殖確認

ミユビゲラは、わが国では北海道中央部の山岳地帯の針葉樹林でのみ繁殖が確認されています。 繁殖地はいずれも大雪山国立公園内です。
大雪山国立公園の広大な針葉樹林が彼らの生息に適しているのでしょう。

ミユビゲラの記録
 1942年 9月19日  十勝三股      1羽
 1942年11月11日  十勝三股   メス1羽
 1942年12月17日  十勝三股   オス1羽
 1942年12月19日  十勝三股   メス1羽
 1956年 6月 7日   十勝三股  ひな 3羽
 1960年 7月     上士幌町幌加  1羽
 1962年 7月 6日   旭岳       1羽
 1970年 7月 8日   旭岳       1羽
 1988年 9月 1日   十勝三股  メス1羽
  (繁殖確認は1例のみ)

 ミユビゲラってどんな鳥?

日本には10種類のキツツキが生息しています。ミユビゲラ、ヤマゲラ、コアカゲラの3種は、我が国では北海道にのみ棲んでいます。

 ミユビゲラの特徴は?

  キツツキ類をふくめて、ほとんどの鳥類は4本のゆびをもっています。しかしミユビゲラには親指にあたる第1指がなく、3本の指しかありません。ミユビゲラ の名前はこの3本の指に由来します。キツツキの第1指は横枝に止まるときに役立つと考えられています。ミユビゲラは横枝に止まるのが苦手なのかも知れませ ん。


 多くのキツツキは頭に赤い羽毛を持っています。つがい形成や争いの時に、この目立つ赤い色が役に立
つようです。ところがミユビゲラ(オスのみ)の頭は黄色です。暗い針葉樹林の中では黄色の方がよく 目立つというので しようか。

 北海道で生きてゆく上での問題点

その1 限られた生息地(少ないトウヒ属の森林)

 ミユビゲラは北方針葉樹林の鳥です。
彼らは針葉樹の森林が大好きなようです。
ただし、針葉樹の中でもトウヒ属(エゾマツ、アカエゾマツ)の森林が好きだといいます。
左の図のように、トウヒ属の多い森林は北海道でも限られたところにしかありません。
広大なタイガに比べると、北海道の針葉樹林はちょっと窮屈な生息地のようです。

トウヒ属のエゾマツが優占する(多い)森林は北海道の中央部、大雪山系にあります。
ミユビゲラが大雪山系でしか発見されないのは、ミユビゲラの好むトウヒ属の森林が大雪山系に集中していることと関係がありそうです。
ミユビゲラはトウヒ属のエゾマツやアカエゾマツの皮の下に潜むキクイムシやカミキリムシをよく食べます。
ミユビゲラの小さな嗜は、トドマツ(モミ属)の厚く文夫な樹皮には歯がたたないのですがトウヒ属(エゾマツ、アカエゾマツ)のうろこ状の樹皮は容易にはがすことができるからです。
キクイムシやカミキリムシが発生するのは年老いて弱りかけた木(老齢過熟木)です。
ところがこのトウヒ属の老齢過熟木はたくさんあるわけではないのです。


その2 少ない採餌木(餌をとる木)
 ミユビゲラはトウヒ属のエゾマツやアカエゾマツの皮の下に潜むキクイムシやカミキリムシをよく食べます。
ミユビゲラの小さな嘴は、トドマツ(モミ属)の厚く文夫な樹皮には歯がたたないのですが、トウヒ属(エゾマツ、アカエゾマツ)のうろこ状の樹皮は容易にはがすことができるからです。
キクイムシやカミキリムシが発生するのは年老いて弱りかけた木(老齢過熟木)です。
ところがこのトウヒ属の老齢過熱木はたくさんあるわけではありません。
 このグラフは大雪山の原生林の1辺40m の正方形の中の樹齢を調ぺたものです。
樹齢が300年を超える木は4本。
大雪山の原生林といえども老齢木は多くないのです。

 ミユビゲラを守るために

その1 採餌木(餌をとるための木)の確保 トウヒ属の老齢過熟木を保存しよう

 ミユビゲラが餌を採るのに都合がいいの木は、トウヒ属(エゾマツやアカマツ)の年老いて弱った木(老齢過熟木)です。トウヒ属は寿命が長く 大木になるため、林業上価値の高い木です。そのためこれまでに多くのトウヒ属の大木が切られてきました。年老い
て弱ったトウヒ属の大木(老齢過熟木)をパ ルプ材として伐採するのではなく、ミユビゲラの採餌木(餌をとる木)として保存すべきでしょう。

その2 国立公園での林業の見直しを (国立公園は避難場所)

 現在の日本の1年間の材木消費量は1億2000万立方メートル。北海道の森林の量(蓄積量)は5億5000万立方メートル。つまり北海道に は日本で使う木材の5年分の森林資源しかありません。このような事情もあって、大雪山国立公園の奥深くまで伐採が進んでいます。国立公園の森林は動物の避難場所としても大切な意味を持っています。国立公園の森林伐採をただちに全面的にやめることは難しいかもしれませんが、このまま伐採が進むなら大雪山の山々の自然は取り返しのつかないことになるでしょう。


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